役目を終えたビニール傘は

 日本の年間降水日数は世界13位です。にも関わらず、日本人1人当たりの傘の所有数は全国平均で3.6本と世界一。日本洋傘振興協議会によると、洋傘の国内年間消費量は1億2~3千万本で、こちらも世界一となっています。

 これに大きく影響しているのがビニール傘の存在です。年間消費量のうち8千万本をビニール傘が占めています。日本人の生活に欠かせないビニール傘ですが、それをめぐる問題点も多いです。

 警視庁発表の遺失物取り扱い状況によると、傘類はおよそ30万本と全拾得物のうち5番目に多く、そのほとんどがビニール傘。遺失物センターで20数年働く職員は、ビニール傘を取りに来る人に、これまで一度もであったことがないといいます。

 一時的な必要性から購入されたビニール傘には、思い入れが無く、役目を果たした後は、ぞんざいに扱われてしまいます。


 わずかな時間で役目を終えるビニール傘、遺失物となったビニール傘の処分も問題です。ビニール傘の先端は金属の骨から作られているため、分別が非常に困難で、ほとんどが埋め立て処理の対象となります。ある産業廃棄物処理工場には、ひと月に20トンから30トンのビニール傘が運ばれてくるようです。焼却処理をするにしても、ダイオキシンによる環境への影響が懸念されます。

 これまで日本は、年間およそ50万トンのプラスチックごみ処分を、中国に頼っていましたが、中国は環境汚染予防のため、2018年に受け入れを停止しました。ごみの処分は以前のようには上手くいかなくなり、日本国内で対応する必要があります。しかし、埋め立て地も限られています。

 焼却にも、リサイクルにも向かない。埋め立て処理の必要がある。そんなものが、日本で大量に購入され、大量に忘れ去られ、大量に捨てられています。これからの世界で必要とされる、サステナビリティの真逆とも感じる現状です。その深刻さが感じられた調査業務でした。
 
2019/08/07 原唯奈







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