丸亀製麺海外店舗の柔軟な商品開発

 アメリカに展開している日本の飲食店について調査しています。
これまでは、商品ラベル、パッケージに関する日米の違いについて分析してきました。この業務から分かったのは、同じ商品であっても、相手の常識や生活習慣に合わせた微調整が必要だということ、その微調整なしでは、消費者に違和感を与えてしまう、ということです。
飲食店の調査においても、同じことの重要性を感じます。海外展開にかける思いとして、日本の本物の味を届けたい、というものがあるはずですが、それだけでは、国外で生き残ることは難しいようです。

2011年ハワイに海外初店舗を出店して以来、アジア・オセアニア・ロシア・米国など世界14カ国に進出した丸亀製麺のアメリカ版メニューがこちら。



出汁と麺を楽しむもの、という日本人のうどん観を脱して、アメリカにうける・馴染むうどんを追求したメニュー構成です。アメリカで一番の人気商品となった、ボリューム感のある肉玉うどんやビーガンに対応した豆腐サラダうどんなどは、日本にありません。

丸亀製麺を経営するトリドールの粟田社長は、海外展開のキーを「柔軟な商品開発」としています。半分は伝統を守るが、半分は現地事情に合わせて現代的にローカライズし、そこで新しいものが生まれることを面白いと考えるのだそうです。

うどんの出汁を現地の食文化に合わせて、濃さ・風味の調整をする。タイではトムヤム、アメリカでは豚骨、とスープを変える。無料の薬味も、国によってはパクチーや唐辛子に変更する。日本食だけど、みんなが楽しめる、それを実現するためであれば、自らの変化を厭わない姿勢が感じられます。

調査を進める中で、日本のものが違う形で海外に広まっていくことに、日本人として少し寂しい気持ちを感じることもあります。しかし、何かを伝えたいときは、自分たちのスタンダードを押し付けるのではなく、相手に合わせるポイントも必要だと理解できるようになってきました。実際に、アメリカ版丸亀製麺のホームページで、メニューにコロッケを見つけたときは、うどんにコロッケという組み合わせに驚きましたが、口コミを見ると、多くの客がコロッケを高く評価していました。

今後丸亀製麺は、中東への出店を検討し、海外店舗数が国内を上回る、真のグローバルチェーンを目指すとしています。伝統の維持と微調整、飲食店の海外展開に重要な姿勢が分かりました。

2019/08/01 原唯奈

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