インターン生が検証 アメリカの小売店でメイドインジャパンを「売れている」状態にするカギ


 私たち日本人は、日本の商品に誇りを持っています。
 品質が優れている、性能がいい、機能が多い、細部まで心がこもっている、だからメイドインジャパンを世界に向けてアピールしたくなります。
 これは、世界の市場に日本の商品が進出すれば、「日本のもの」というだけでブランドになるという考えに近いです。
 
 しかし、私たちが考える「良さ」は、言葉もライフスタイルも異なる世界の人と共通するものだといえるでしょうか。
 いくら素晴らしい商品でも、相手のスタンダードに合わせた微調整なしには、魅力を伝えることはもちろん、興味を持ってもらうことにも高い壁ができてしまいます。
 
 世界最大の市場アメリカに進出するのであれば、まずは現地でものがどのように売られているかを理解する、そこに溶け込みつつも魅力を維持するということが必要です。
 小売店でアメリカ人に違和感を与えない、でも注目を集める、という2つを両立するには、「商品のバリエーションと色展開」がカギであるように感じます。

 このカギが具体的に何を意味するのか、まずは、実際に訪れて撮影した、アメリカの小売店の様子を見てみましょう。



 各企業が、バリエーションに富んだ商品を展開することで、広範囲又は2列以上の商品棚を獲得し、売り場をデザインしています。

 パッケージデザインの良さが大前提となりますが、大規模なアメリカの小売店で他商品と肩を並べるには、商品の種類を増やすことが近道となります。
 
 以下は、アメリカの味噌メーカー「MISO MASTER」と日本でおなじみの「マルコメ」の商品紹介ページの比較です。



 
 アメリカのMISO MASTER1つの商品につき6種のフレーバーを展開している一方、マルコメは2種のみとなっています。
 
2社の商品が実際の商品棚に並んだ様子がこちら。


種類が多いMISO MASTERは、陳列スペースを広く獲得できるだけでなく、そのバリエーションで商品棚をデザインすることが可能です。
マルコメの味噌は、1種類のみが、味噌コーナーの隅に陳列されています。

 種類の多さによる視覚的な美しさは、売り場担当者からの評価につながると考えられます。その評価が、商品をまとめて小売店に入れるチャンスとなるでしょう。また、店舗を訪れる消費者も、目に留まりやすく、デザイン性に優れた商品を求めていると予想されます。
 
 そう考えると、「味噌は日本の食品だから、メイドインジャパンのものを選んでもらえる」という考えがあまり現実的ではないように思えてきます。

 小売店の様子と、味噌メーカー2社の比較から分かるように、アメリカでは、1つの商品を多種展開することが基本のようです。

 もちろん、バリエーションを制限したまま、アメリカ市場での成功を目指す商品も存在します。
 

キューピーがアメリカで販売しているマヨネーズは、日本オリジナルのものと、2016年から販売を開始した、アメリカの一般消費者向けにに微調整したもの、2種のみです。

 
 日本オリジナルのマヨネーズは、日本食レストランを対象に、業務用として順調に販売を伸ばしましたが、一般米国市場向けは、ブランド認知度が十分でなく、キューピーブランドとしての商品展開を見合わせていたといいます。

しかし、キューピーは米国市場の大きさに改めて注目し、米国製造の一般消費者用マヨネーズの販売に踏み切りました。日本でも、根付くまでに100年近い歴史を要したキューピーブランドのマヨネーズ。既にマヨネーズが浸透しているアメリカでも、これから10年、20年という時間を要することが予想されますが、利益だけでなく、「キューピー」というブランドとしてじっくり展開していきたい、という覚悟がこのやり方に結びついています。

こだわりの商品1本でじっくりと勝負をかける。これも一つの戦略です。

しかし、時間や費用を重視し、商品のバリエーションでアメリカ市場にアプローチすることも、大きな力を持っています。
その効果を十分に引き出す方法として、一番に考えやすいのが商品の色展開です。

アメリカのスーパーマーケットは、ターゲットとなる顧客の生活水準が高ければ高いほど、店内のカラーコーディネートに力が注がれています。


 全米展開しており、オーガニック・ナチュラル志向の消費者が集まるスーパーマーケット ホールフーズの売り場です。
  本来であれば、同じアイスクリームは一か所にまとめるでしょうし、シーフードの売り場にパプリカを並べることはないでしょう。
 
 ただ商品を並べるのではなく、彩りを重視することで、店内をデザインし、商品に付加価値を与えています。消費者は、心も明るくなるような店内で、買い物を楽しみます。
 色がこれほど影響力を持っているのが、アメリカです。

 店内を美しく、魅力的にしたい店員と、彩り豊かな選択肢から商品を購入したい消費者。
色を効果的に取り入れることで、双方の要望に応じることが可能となります。

 いくら魅力のあるメイドインジャパンの商品でも、アメリカでものが売られている様子を理解し、それに対抗できる見せ方をすることが必要です。
それなしでは、十分に価値を伝えることはおろか、店舗に入ることも容易ではありません。

アメリカ市場になじみ、売り場担当者に重宝される形で店舗に商品を入れてもらう。それでいて注目を集める戦略として、商品のバリエーションと色展開は、1つの有効なポイントであると考えます。

2019/08/23 原唯奈





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