アメリカのスーパー「ホールフーズ」視察


※この記事は研修生のKariyaが作成しています。

 先日もスーパーの視察に同行させて頂きました。店内の様子をご紹介します。

Whole Foods Market (ホールフーズ マーケット)
 Whole Foods Marketはアメリカを中心として世界に270店舗以上を展開する食料品スーパーマーケットです。比較的高級志向・健康志向の顧客を対象としており、商品の99%がオーガニック食品といわれています。
 今回はロサンゼルス国際空港より車で10分程度に位置する、ホールフーズの中でも大きい店舗へ行きました(地図はこちら)。この店舗は比較的高収入の世帯が多い地域に位置し、彼らを意識した店づくりをしています。
 さっそく入ってみましょう。店内の天井は高く、開放感・広さを感じさせます。

 青果コーナーに隣接したオーガニック生ジュースバーです。

 注文すると、画像右下の置き場から目分量でプロの目線で野菜を取り、画像左下のミキサーにかけてジュースにしてくれます。
 グリーンスムージーを飲んでみましたが、フレッシュなのはもちろん、無理に甘みを演出せず野菜そのもののストレートな後味が印象的な一杯でした。非常に健康的な気分になります。


商品陳列について

 商品陳列においてカラーコーディネートが強く意識されているのがアメリカの特徴です。以下にその具体例を紹介します。
 青果コーナーでは、赤系の色をアクセントとしてメリハリのある色配置になっています。このカラフルな陳列によって商品がより魅力的に見え、購買意欲が上がるそうです。

他のスーパーでも、青果コーナーは 大体このような陳列になっています。

 ナッツ売り場です。ロサンゼルスではスーパーやファーマーズマーケットに必ずと言っていいほど多種類のナッツがあります。こちらも色の濃淡がバランスよく配置されています。

 精肉コーナーです。画像下中央のミンチ肉ですが、ひとかたまりずつに分けて整列されています。日本では山積みのミンチが多く見られるので、これには驚きました。
ミンチが小分けになっていること、小分けの繊維の方向が真横ではなく斜めに揃っていること、全体の繊維の方向も揃っていることから、洗練された印象を受けます。最初から少量に分割されていることで、量が捉えづらい「重さ」単位だけでなく、見た目で判断できる「多さ」を基準に買うこともでき、消費者にとって買いやすい陳列です。

 このように、魅せる商品配置の工夫が随所に見られました。もちろん日本はアメリカと文化も感覚も違うため、アメリカの手法をそのまま取り入れて日本で成果が出るとは限りません。しかしアメリカのトレンドは2〜3年後に日本のトレンドになることが多いため、日本国内で考えているだけでは決して思いつかないアメリカの方術を、少しずつ日本の売り場で応用してみても良いかもしれません。


ベーカリーについて

 工場で焼いた出来合いのパンのコーナーが棚の5分の1程度しかなく、他のスーパーと比べてかなり狭いのが特徴です。

 その代わり、店内のベーカリーコーナーが充実しており、多くの人はここで焼きたてのパンを買っていくとのこと。生鮮食品だけでなく加工食品にも鮮度を求める客層を対象としているのがホールフーズです。


パッケージについて

 アメリカ人に日本の商品を売りたい場合、商品パッケージの工夫が非常に大切です。多くの日本の商品は、品質が高いにも関わらず、購入者であるアメリカ人に買いたいと思わせるパッケージデザインになっていません。その結果、より訴求力の高いデザインの中国や韓国の製品にシェアを奪われてしまっているのが現状です。見た目の少しの違いだけで、日本の良い商品が広まらないのは非常に残念なことです。
 日本の商品パッケージがアメリカ向けになっていない、現地の売り場に馴染んでいない実例がこちらです。
これはアメリカ製のペットボトル飲料です。上段のGreen Teaの缶デザインは、ミックスベリーやピーチなど、フレーバーの絵が大きく描かれ、一目でその缶が何味かが分かるようになっています。下段のコーヒーも、青・オレンジ・緑など、缶の色が濃くはっきりと分かれており、種類の違いが分かりやすくなっています。
 アメリカのスーパーに並ぶ商品は、「それがどういう商品なのか、何に使うのか、どんな特長があるのか」が一目で分かるように工夫されています。

 その下の段に並ぶ伊藤園のTEA'S TEAです。
 画像中央の段ですが、ここだけ周りの商品から若干浮いているように感じられました。

・周りの濃い色の商品に目が慣れた状態で見ると、TEA'S TEAはラベル全体の色使いが淡く感じられ、色の違いが捉えづらい。
・フレーバーの絵がほぼ緑の葉っぱ(よく見ると微妙に形が違いますが)であり、絵ではなく文字をよく読まないと、何味なのかが判断できない。

 これらの点から、一目で特徴が分からないため、アメリカ人にとって手に取りづらいラベルといえます。葉っぱの絵を違いのわかりやすい形に変更してもう少し上部に大きく表示するなど、少しの工夫でまた売れ行きは変わってくると思われます。

 このパッケージデザインの点で非常にうまくアメリカに適合しているのが韓国の企業です。
 こちらはキムチです。韓国のスーパーでは、キムチは背の低いプラスチックの瓶や、日本の漬物のように透明なビニール袋に入った状態で売られているのが普通です。しかしここではスタイリッシュなラベルとガラス瓶を採用し、ピクルス系の売り場に溶け込んでいます。ピクルスの瓶はアメリカ人の冷蔵庫によくあるものであるため、同じサイズ感の瓶にすることによって、より受け入れられやすくなっているのでしょう。

 他の売り場には粉末日本茶やビールなどもありましたが、パッケージが日本で売られているものと同じであるためにマイナー商品扱いされ、棚の隅や最も下の段にひっそりと置かれていました。もちろん、現地の日本人に対して売っているのであれば日本独特のパッケージのままで構いません。しかしアメリカ人を対象とするなら、売り場の棚、アメリカ人の価値観や生活に溶け込まなくてはなりません。

 アメリカ人向けを意識したパッケージの例として、こちらのインスタント味噌汁があります。
 三つ並んでいるうち、両端のパッケージでは味噌汁が入っているのはお碗ですが、中央のパッケージでは陶器のスープカップです。アメリカの家庭に味噌汁用のお椀はないため、味噌スープはスープカップやコーヒーカップで飲むことになります。多くの人にとって陶器カップに入った味噌汁の方が目に馴染んだ風景になるため、それを汲んだパッケージになっているのです。(それにもかかわらず両端より売れていないのはまた別の要因が絡んでいるのでしょう...)

 こちらはBUBBIESというハワイの会社が発売しているもちアイスで、カラフルな雪見だいふくに似た商品です。
 スプーンいらず、手で掴んで食べられるアイス!というコンセプトで売り出しています。
餅は「アメリカ人の苦手な日本食」の上位に位置していますが、アイスと組み合わせることによって多くの人の気持ちを掴むことに成功しました。
 これはパッケージではなく食材のアメリカナイズの一例ですが、ここでもやはり、手に取ってもらうためにアメリカ人に訴える見た目が重要です。このアイスのサイズ感やカラーバリエーションはパッケージデザインの参考になるのではないでしょうか。

国外市場への参入には多くの困難が伴いますが、それでもなおアメリカの大きな市場は魅力的かと思います。日本の商品をアメリカで売り出したい場合、現地で生活している人々の感覚を知り、そこに商品を調整して合わせていくことが重要です。その第一歩として、実際に現地の売り場を視察してみてはいかがでしょうか。







   


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